しとしと落ちる

創作、雑多、日記

いつかの思い出話として

 妊娠7ヶ月目も終わりを迎えようかというころ、某ウイルスが私の身体に入ってきた。ついにきたか、と思い持てる免疫すべての効力を発動させて、某ウイルスを撃退……というわけにはすんなりいかなかった。名前を言ってはいけない例のあの人みたいな扱いをしているが、別になんてことはない、コロナである。

 妊娠中期。ワクチン未接種。喫煙歴バリバリ有り。年明けから上昇して収拾がつかなくなっている感染者数を見ていると、「いつかは感染するだろう」と、覚悟ないし諦めに変わり、感染対策はしていたものの、もういっそ一度感染してしまった方が気持ちが楽になるのではないかという思いすらあった。私の職業柄、コロナを気にしていたら気持ちがもたないのだ。

 某日。朝目が覚めて、やけに喉が乾燥していることに気づく。痛みも咳もなく、ただ軽い不快感があった。白湯を飲みながら仕事をこなし、帰りに龍角散を買って舐めるとマシになった。

 次の日、喉の乾燥はあったが龍角散を舐めながら出勤。2時間後に酷い寒気と発熱に襲われ、早退。そこからはあっという間に体温も39度近くまで上がり、病院の駐車場で検査をして1時間後には陽性者として保健所に情報が渡され、あれよあれよというまに寝室に隔離されたというわけである(仕事を早退した旦那によって)。妊婦でも飲める解熱剤を飲むと、熱は一気に下がったが、全身の関節痛と倦怠感が酷く、ゾンビのようになっていた。

 それでもさらに次の日には咳と鼻づまり程度になり、寝室にて「暇だ暇だ」と嘆いては、活発すぎる胎動の相手をして時間を過ごすしかなく。私の後に次々と感染した同僚や先輩と通話しながら、日々を送ったのだった。個人的にコロナよりも悪阻の方が辛かったのだが、お腹の中の人はそれを知る由もないので、産まれてからいつかの思い出話として語り聞かせてみよう。