香る

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きっとこんなにきれいだから、風に漂ってくるのだ。春の匂いが。私はこの匂いがどうしても好きになれない。季節の変わり目の匂いだからだ。新しいことが始まる不安と期待が入り混じった、みんな笑っているけれど、どこか心配事が隠しきれていないような感じがする。それが筒抜けて伝わってくるので、苦手なのだ。

春の匂いは好きになれないが、花見は、というより色鮮やかなものは好きである。素直にきれいだと思えるし触れてみたいとも。ただ、触れる力を間違えると花びらはすぐに散ってしまう。繊細なのだ、花も、私たちも。

私たちも扱い方を間違えると、すぐに不安の方が勝ってしまう。頭の中が、彩りのない無色透明になって、胸にどんっと重い岩が乗っている気がする。息ができなくて、できて当たり前だったことが一気にできなくなる。やめてほしいと、何かに向かって叫ぶ。自分ではどうすることもできないので、ただただ恐怖だ。畏怖すべきもの。お願いだから、こないでほしい。私の彩りを奪わないでほしい。薬も飲むから。ちゃんと眠るから。楽しく生きるから。鬱がこないでほしい。