冬の煙たい匂い

 

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 朝、すうっと冷たい空気を吸うと、心のなかまできれいになった気がする。はぁっと吐き出される白い息が、宙に消えていくのを眺めながら、煙草の煙に似ているなと思った。隣に誰かのぬくもりを感じる夜は、いつだって甘えてしまう。その人の気持ちに甘えてしまう。キスをしたし触れ合ったけど、それだけ。私たちの関係は絶対に変わらないし、セフレという存在にもならない。

 わかっている。ひとりに恋をしてしまったとして、その人とお別れをしたとき、どうしようもない苦しさと辛さで自分がどうにかなってしまいそうになる感覚。経験をしたことがあるからこそ、守りに入っているのだと私だってわかっているよ。恋人だって、恋人という枠に当てはめたから特別視しているけど、本当は彼も、彼も、彼のことだって私は気になっていて、気にしている。好きな人が複数人いる、といえば軽く思われるかもしれないけど、実際そうなんだ。

 でも、そうでもしないと、私は自分を守れない。

 誰かと幸せになったり、恋をしたり、一途に思い続けたりすることは、怖いことだ。

 恋愛に臆病になっているの、と自問自答して、思わず笑ってしまった。そんな可愛いものじゃない。ただ寂しいだけ。自分の周りから人が去っていくことに耐えられないだけ。そして男たちに抱きしめられているとき、頭をかすめるのは「これが母だったらよかったのに」という、どうしようもない幼心。そのときだけ垣間見える自分の幼稚さに嫌気がさすし、自分を痛めつけることに対してコントロールができないことにも悩むけど、実際この年齢までなんとか生き続けているから、私はぜんぜん大丈夫なのだろう。

 そうやって自分で自分を愛してあげないと、私を抱きしめてくれる人はいないから。

 自分の愚かさを甘やかして、不幸に酔って、寂しい時間をごまかして、そうしながら私は私らしく生きていく。自分の芯がぶれて、悪いものに影響をされて、後ろを振り返りながらも。

 

「人生、なんとかなるねん」

「ほんまに、ゆうてる?」

「うん。だって、今こうやって平和やん」

「平和やな」