甘い物食べなきゃ

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 多くを考えすぎると疲れがたまるので、甘い物を食べながらダラダラしなきゃ。そう思ってあたたかい紅茶を飲んだ。フロリーングの床から足の裏に冷えが伝わって、あんなに寒かったのに、体の芯がいっきにぬくもった。つま先はどうだろうと思って触れてみると、どうしてだろう。冷たい。なんだか悲しくなったけど、もう考えないって決めたんだ、今日ぐらいいいじゃないかと思って、放棄した。もう、この体は冷たいままなのかな、なんて。

 

 なので昨日まで考えいたことを、ただがむしゃらに文章に起こしているだけなの。

 恋人とお別れをして、心細さはあるけれど、それを埋めるためには見知らぬ男を家に連れ込んでしまう自分の愚かさに笑ってしまった。でも、本当に、何もないの。キスすら。もともと男にふられて、見知らぬ男とその夜にセックスをするなんて、私らしくない行為(あくまで私自身はそういうことをしない。あなたたちはどう?)なので、ただ、目と目を見て、相手の雰囲気を感じながら、話がしたかっただけ。寂しかったと、よく人は言うけれど、確かにそれもあった。私は、ずっと寂しい。恋人がいても、ずっと寂しいの。

 その翌日にホテルに行こうと誘ってきて、たまたま別の予定があったことと、「誰でもいいなんて、最低ね。やっぱりこういう人だよね」と一瞬冷めてしまったことで、そのお誘いは断った。「他をあたって。でもきみのことは気になっている。私が本当にきみに抱かれたいときに誘うね」と。こちらだって、プライドはあるのだ。軽い女、簡単な女だなんて思われたくない。そんな意地があったのだ。

 

 でも、でもね。抱きしめてくれないこの体に一体何の価値があるのだろう。

 誰からも求められず、愛されず、甘やかされない、女の体。私の満たされない寂しさは、もうどんなに幸せな時間がきても絶対に埋まることはないのだ。だって、その寂しさはセックスに依存しているとか、恋多き人生だとか、そういうもので埋まらないから。もっと、もっと、幼いころの、お母さんとお父さんとの戻らない時間。私をなんの汚れもない心で抱きしめてくれていた、両親への思いだから。そしてその思いは何度も砕かれて、こちらがいくらあがいても、取り戻すことはできないものだった。

 

 だから、抱きしめてもらいたい。甘やかしてほしい。子どもみたいに。

 私という存在を認めて、拒まず、受け入れてもらいたい。年老いた祖父母に苦しむ姿を見られて、それに涙する二人を見て、後悔した。私の母が壊れていく様を、ずっと泣いて見てきた私のような思いをさせてしまったと。ごめんなさいと。

 

 ホテルに行こう、と昨夜の返事とは一変している私の言葉に、彼はいっさいのからかいもなく、「また予定のない日に」と返ってきた。

 抱かれる自分を想像して、なんだか元気が出てきた。おかしい話だけど。やっぱり人間というのは面白い。私自身が一番面白い。こんなにコロコロ心が変わって、涙も出るし、笑えるし、落ち込めるし、一日で何度いろいろ気持ちが二転三転するのだと思う。

 …………ああ、もう。(笑)

 

 甘いもの食べなきゃ。

 

「こういうの、どう思う?」

「あなたのやりたいように…すればいいと思いますよ」

「そうやろね。決めるのは自分やんな」

「はい」

「あー、じゃあ、抱かれるわ!」

「はい、頑張りましょう」