ぽっかり

 朝方に何度も目を覚ます。ひどく怖い夢を見たせいかもしれないし、開いた窓からの風が冷たいせいなのかも。アイフォンのホーム画面を見ると4時だった。深く眠ることができず、それに苛立ちながら目を閉じる。時間だけが流れていく。きっと、10分も経ってないんだろうなと思った。

 

 恋人に別れたいですと言われた。べつにかまわないと思った。むしろ、恋人っぽくなくて、どちらかというとなし崩しな関係に近かったから、「別れる」という言葉が合っていない気もした。私も何度も頭をかすめた、その言葉。もう体を重ねないし、部屋にも行かないし、一緒に眠ることもない。

 その日々が、恋愛として彩られてはいなかったけど、ごく普通の、まるで兄妹のような関係が気に入っていたから。それがなくなることが怖くて、恋人という関係をやめたいということを、自分から言えなかった。勇気がなかったの、私も。

 失恋したーって泣くことはなかったけど、私に興味がなかったからこそ、自分の弱さを見せれたし、欠点をさらけ出せた。一人暮らしも、彼がいなければ絶対にできていなかった。精神的にも、いろいろな手続きのことも、家具を何往復かして私の新居に運んだことも。眠っているとき、私の自傷行為を止めてくれた。それは、彼にとってはべつに大したことじゃなかったかもしれないけど、私の周りにそんな人はいなかったから。干渉せず、関係ないと言いつつ、優しくしてきて、今思えばずるくて、一番苦手なタイプだったかもしされない。

 だからこそ、好きでもなかったからこそ、心地よかった。嫉妬することもなく、互いを気にすることもなく、興味もなく。そんな彼の存在は、しっくりするほど馴染んでいた。

 喪失感はある。けれど、去年の10月のように、胸が痛くて涙が止まらなくて、ずっと泣いていたようなことにはならない。

 成長したわけじゃない。恋愛をしていたかしていなかったかの違いで。何も変わっていない。私は、ぜんぜん、平気じゃない。

 

「別れたんやけど」

「ええやん。フリーの方が楽しいやん」

「んー…んー…うーーーーん」