子どもみたいに


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 島にきた。

 のどかな波の音と、風と、光。ここには音がたくさんあるのに、やけに静かだと思った。静かで、生命力に満ちていて、力強い。透明の空気を吸い込んで、肺の底まで綺麗になれた気がした。

「こういうところで、ひとりで住んで、死にたい」と笑いながら言った。「35歳ぐらいで、死にたい」と。私の心の内を、さらりとさらけ出しても許されるような、受けとめてくれるような、そんな感覚にさせてくれる。目に見えない力が、なにかそこにあるんじゃないかとすら思った。

 こういうところは、同じような共感を得てくれるか、私の感じた言葉にできない感情を受け止めてくれる人と行きたかった、とこっそり思った。恋人は「目に見えるものだけしか信じない」といった人なので、私のなかで渦巻く力強いこの感情を彼に伝えなかった。

 恋人は、子どもみたいにはしゃぐ私を日陰から眺めている。自分が行きたいと言ったから私がついてきたのだけど(私は基本、その人の行きたいところに行く)、私のほうが写真をたくさん撮って、島を感じていたように思う。

 さびれた遊具で童心にかえりながら遊ぶ。私はこの島に来たことがないのに、どうして懐かしいと思えるんだろう。「きみといつか会った?」遊具に話しかける私を、恋人が苦笑しながら「変だから」と言う。変だから。そうかも。私は、どうかしているのかもしれない。恋人と手をひいて、まるで、私たちは指名手配犯でこの島に逃げてきたみたいだね。「おやすみプンプンの読みすぎかいな」とまた私が独り言。それは彼には聞こえていなかったみたいだ。

 

「光が、さあ、眩しいやん。頑張らんでもええのにね」

「何を、頑張ってるの」

「え?……光るのを」

「ふふふ」