特になにも

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  苦しさや混乱が消えてくれているのは 、薬のせいだろうか。あんなに重くて、呼吸をすることすら痛みがあったのに、今はそれがない。

  まだ、何をするにしてもよいしょがいるし、朝は起きられず、お昼前出勤だし、人の多いところに行くと震えるし、まず外に行くことすら実は怖かったりする。

  だけど家事も少しずつできるようになってきたし、仕事も少しずつ時間が伸びてきているし、友達に会ってみようという気持ちになっている。もっとも、私が心配だからという理由で来てくれるんだけど。

 

 

  恋人と一昨日か昨日か、セックスした。二人とも次の日は仕事だったけど、そんなの、関係なかった。二人だけの時間が流れる。私の足の間に顔をうずめる彼が、なんだかおかしかった。

  終わったあと、いつも彼は彼の寝やすい体勢になるけど、この夜は私を抱きしめて、すぅっと寝入った。私も。

  そして朝、何度か私が動くとあやすように額を撫でたり、背中をさすったりしてくる。父親みたいだ、と思った。

 

  意外に元気なのかもしれない。そう思えることはいいことだと言われた。ただ、焦らないこと。母さんは私が一人暮らしをして「ほっとしてる」らしい。私が出て行って、気になって眠れないほどの対象がいなくなったので、安心しているのだ。私はもうあの家に帰らない。

 

「なんか、よかせ、かわいそうやん」

「よかせよりかわいそうな子、よっけおるわ」

「……よかせ、悲しそうじゃないやん。それがなんか、切ない。あたしにとって」

「……そう」