幼い頃、祖母と従兄弟と一緒に自転車で長い坂道を登ってお墓詣りに出かけた。墓石が何百とあって、そのうちのひとつに、祖母の両親が眠っていた。灰色の墓石の中にまぎれる、真っ黒でつやつやした墓石だった。「これだけあるのだから、ひと目見てすぐわかる…

そのまま

きえてしまうのかと

創作 「心のすきま」①

目が覚めると、とっくにお昼は過ぎていた。今日、何曜日だったっけ。仕事を無断で休んじゃった、と一瞬焦燥感で胸が締め付けられた。でも、一週間前に仕事を辞めたことを思い出して、パリッと硬直していた体が安堵してふにゃふにゃになっていった。目は開い…

台風の中、傘がなくて、無謀だけど飛び出した。出勤するのが嫌だったから、むしゃくしゃしていたから、思いきり雨を浴びた。昨日打たれた鎮静剤のせいで、右肩がかなり痛い。 コンビニで650円のビニール傘を買ったけど、なんだこれ、ぜんぜん役に立たない。…

カーテンを開けると、いつも通りの青空があって、眩暈がした。耳にこびりついた蝉の鳴き声にも慣れて、すっかり夏色に染まってしまった。この季節になると、バカみたいにポケモンGOをしてポケモンを乱獲していた去年の夏を思い出す。モンスターボールを投げ…

身近にある

4か月ぶりに友人と会った。彼女と知り合って、もう7年にもなる。見た目も中身もまったく変わっていない彼女に会うことで、目まぐるしく変化していった自分の周りの環境、そして自分自身の状態が、ぜんぶ無しになった気がする。安心するのだ。どれほど苦しい…

ひとりだし

アパートに住んでいる住民を、まだ一度も、ひとりも見かけていない。ベランダに吊るされた洗濯物、停めてある車、投函されはみ出しているチラシが、私以外にもこのアパートに人がいるということを決定づけている。 生活音が聴こえるたび、やっぱりほんの少し…

可能性

蝉の鳴き声で彼の声が聞こえない。何度も聞き返すのも面倒くさくなって、わかったふりをして適当に笑って頷く。 容赦なく照りつける日光にジリジリと肌が焼かれていく。嫌なので日焼け止めをしているけど、どうしても日焼けをしてしまう。それなのに「首焼け…

冷たいポタージュ

高校一年生からの腐れ縁の同級生と、カフェでおしゃべりをした。そのとき食べていた冷たいポタージュがあまりにも美味しかったので、正直、彼女との会話の中身をまったくといっていいほど覚えていない。 陰鬱な内容だったかもしれない。これからの人生をどう…

雨が続く

今週はずっと雨なんだって。 せっかく仕事から帰ってランニングをしようって思っていたのに。なんだか予定も狂っちゃって、ほんの少しガッガリ。 だけど、雨の日に聴く音楽とか観る映画っていいね。雨だからっていう理由で家に引き込まれるし。無理に外出を…

なにが好き?

私は、化粧をしているとき、ごはんを食べているとき、こういう日記を書いているとき、必ず小さめの音量で音楽を流している。べつにしっかり聴きこまなくてもいい。歌詞の意味とか浮かぶ情景とかを考えているわけじゃない。日常を少しだけ彩るために流してい…

怒り

雨の匂いがする。今日の朝、自然に目が覚めて、雨粒が地面に叩きつけられる音に、少しだけ憂鬱になった。雨は嫌いだ。出窓を網戸にしていたので、雨で濡れている。表情を変えずにタオルでそれを拭いて、洗濯機に放り込んだ。朝ごはんをモソモソ食べながら、…

今日

仕事から帰って、重い体を引きずりながら、シャワーを浴びる。暑いなかずっと外にいたので、肌が赤くなっていた。冷水をかけると、一瞬、息がとまって冷たさに体が慣れるまで待つ。そのあと体の力を抜く。 パンツだけ履いて、布団に倒れ込んだ。疲れがどっと…

朝の幸せ

出勤をする1時間前には必ず起きる。 起きてすぐにすることは、ツイッターやインスタグラムの徘徊。昼夜逆転の生活をしている者や、ニート、心になんらかの病を抱えている者、お洒落な毎日を送る者。私が好んで生活を覗き見しているだけ。もっとも、SNSに…