しとしと落ちる

創作、雑多、日記

みどりのそばで、④

混雑のピークが終わり、14時に遅いまかないを食べる。「翠ちゃんは今日も家なのか?」トマトクリームのパスタをフォークに巻き付ける俺に、真澄さんが声をかける。客の出入りが落ち着いたときは、真澄さんもカウンターの奥で、屈んで珈琲を飲んでいる。 「…

深夜に聴くジブリ音楽の心地よさ

ジブリ作品が好きだ。特に詳しいわけではないけれど、子どものときと大人のときとで、印象がまったく違う。「紅の豚」と「耳をすませば」は何度観ても飽きないし、一度では気づかない発見もある。 「紅の豚」を視ているとき、私はジーナに強い憧れを持つ。 …

みどりのそばで、③

翠が珍しく眠った。6畳の和室は翠の寝室となっており、そこに布団を敷いて彼女は寝ている。布団一式と木製の箪笥、机。机の上には灰皿と、文庫本が3冊、白い鉢植えに植えられたパキラが隅に飾られている。それだけの部屋だけど、翠がいるだけで額縁に飾ら…

みどりのそばで、 ②

9時までに洗濯物と皿洗いを済ませ、シャワーを浴びる。この時期の風呂場はタイルもひやりとしていて、足の裏の皮膚がそのまま引っ付いて剥がれてしまうんじゃないかと心配になる。換気扇を回しているけれど、戸を開けるといっせいに湯気が部屋へ逃げていく…

摂食障がいについて

156センチ。45.3キロ。 これが今の私の身長と体重だ。平均体重よりかは痩せてはいるが、自分ではこのくらいがいいと思っているし、一般的に見れば「ガリガリでも太すぎでもいない」ラインだと思う。 こんな私でも2年前は体重が40キロもなかった。べ…

大晦日、そして新年

*ガキ使のネタバレを含みますので、ご注意ください。 新年あけましておめでとうございます。 2020年になりましたが、特に何も変わらずゆったり時間が流れている。昨夜は家から一歩も出ず、引きこもり干物女と化していましたが、ガキ使が始まるまでの2…

今年も、ありがとう

目が覚めると、昨夜遅くに遊びに出掛けた恋人が寝息を立てていた。時刻は12時10分。私が寝たのが0時だから、ぐっすり眠ったことになる。寝過ぎて重たい頭をあげ、ひんやりしたリビングへ。 少し前から風邪をひいていて、喉の痛みが鬱陶しい。なぜ治らな…

今が良ければそれで

自分が満たされているときほど、他人の苦しみに干渉する馬鹿な女が、死ぬほど嫌い。濃い化粧と甘ったるい香水の匂い。長いネイルは攻撃的だし、着ている服はみんな安っぽい。ここまで敵意を剥き出しにしているのは特定の女だけど、彼女に対して何かしらのマ…

夜が長かった

恋人から絶対的な愛情を注がれても、満たされない何かが常にある。その正体をずっと探しているのかもしれないし、敢えて目を背けている気もする。 早寝早起きを、今日から心がけるつもりだ。さっぱりとした気持ちで1日を始めたいし、なにより健康的に過ごし…

甘いのか辛いのか

卵焼きのことである。 また昔の話からになってしまうが、私は6歳から朝ごはんを自分で作っていた。ガスコンロではなくIH(当時はまだ少なかったのかな?)だったので、ボタンひとつで簡単にフライパンが温まる。最初に作った炒り卵は、塩を入れすぎて辛か…

弟について。

母、父のことに触れたので、ここで弟のことについても書いておこうと思う。先に言っておくならば、彼は私とあらゆる点で「正反対」である。本当に同じ親から生まれ、同じ家で育ったのかと疑いたくなるほど。 漫画を読む人ならイメージしやすいかもしれないが…

お父さんお元気ですか?

母の話はよくするが、父の話をあまりしていないので、唐突に書いておこうと思った。父と娘。同じ血縁でありながら、最初に深く関わる異性でもある。嫌悪感、真逆に親愛を抱く人もいるだろうし、それぞれの形で成される関係性に正解も間違いもない。これはあ…

鮮やかで、白々しい偽りの夜

数年前、目的もない時間を一人で過ごすことに虚しさを覚えていたとき、やたらと人に出会っていた気がする。出会い系で知り合ったり、友人のそのまた友人の紹介だったり、とにかく人と会い、話し続けた。幸い人見知りをする性格ではないし、周りからすると「…

みどりのそばで、 ①

最近また眠れていないのか、翠は俺より早く起きている。 ベランダに出ると、冷たい風が肌にあたって痛い。 つま先をこすりあわせながら、マッチで煙草に火をつける。「さむい」と言うのが聞こえた。彼女は何故か半袖のシャツに、薄い生地のズボンを履いてい…

最近、子どもみたいに泣いてしまう

澄んだ空気を肺一杯に吸い込むと、寿命が延びた気がする。チーズパンを夜食に頬張り、それでも減少の一過を辿る体重は、私の期待に応えてくれない。たぶん痩せることに対しての焦りは偽物で、本心ではこうなることを望んでいるのだと思う。食べることも眠る…

Summer

唐突だが、私は4歳から19歳までピアノを習っていた。週に一度、近所の音楽教室に行って個室で先生と二人、レッスンをするのだ。グランドピアノは冷たくて、秋や冬なんかは指がかじかんだうえに、その鍵盤を指の腹で押すのがとても辛かった。 個別指導で小…

アルコール5%のビールを飲んだだけで、いとも容易く私の体は変化する。内部から、表面へと浮き彫りになる不要物の影響。こんな簡単に支配されるものなのかと、つくづく自分という人間は単純だと笑わせてもらっている。10月だというのにまだ日中は暖かい。…

朝食は卵とヨーグルト、ミニトマト。彼はコーンフレークを好むけど、ベチャベチャなのは苦手なのでミルクをべつで出しておく。カリカリの目玉焼きとほどよく焦げて裂けたウインナー、緑の美しいブロッコリー。紅茶を楽しみながら、彼の食べる様子を見つめる…

そこに海があった。いつもより慎重な運転で車を走らせる。カーブと坂の多い山道で、ほぼ一車線、信号はない、人間とイノシシはいる(イノシシは実際に見たことがないので、いつ瓜坊が畑の作物を求めて走ってくるかわからず、やけにそちらを気にしていた)。…

女子高生のとき、好きな男の子の手が少し腰に触れるだけで、そこが熱を持った。狭くておしゃれな雑貨屋屋、女の人が後ろにいることに気づかなくて「こっち」って。夏休みに、教室で一人文化祭の準備をしていたことを思い出す。まだみんなが集まるには早い時…

夜。凛として時雨を流しながら、ベランダで吸う煙草は、別にいつも通りの味なんだけれど特別な時間のように感じて。伏せた視線の先に蝿の死骸を見ては、部屋のぬくもりと対照的に映るその死を偲んだ。禿げたネイルと少しめくれた唇の皮を弄びながら、網戸を…

愛は手に入った?

春だというのに風は冷たくて、せっかく新しく買ったワンピースも着ることができない。寒さはひとりを思い出すから好きじゃない。当たり前に続く生活、落ち着ける匂い、日々の小さな喜びを積み重ねて、それを共感してくれる相手がいるからまだ私はなんとかや…

祖父母を待っているからブログを書く

年末を迎えて街は賑やかだ。クリスマスとはまた違った類の賑やかさ。ショッピングモールでは多くの人が忙しなく、商品を手に取ってはまた戻し、手に取ってはまた戻し……。華やかな、そして各家庭それぞれの正月を迎えるために、買い物をしている。普段通りに…

はだかんばうの 足

彼にすべてを要求することは私には絶対にできないんだろうなって思う。会いたいと言ったって「昨日会ったじゃん」と言われるだろうし、口には出さなくても思われるのですら辛い。夜を越えるのが苦しくて、早く眠りにつくようになった。孤独に馴染んでいける…